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リリース/会見

専務記者会見

市本専務理事冬季記者会見(平成24年1月24日)

相場会長代表理事

ビール酒造組合の諸活動に対しまして、
格別のご理解とご支援を賜り、心から感謝申し上げます。
本年の諸課題についてビール酒造組合の取り組みを
ご報告申し上げます。

昨年の市場動向

 昨年は、わが国にとって試練の年となりました。

 3月11日、東日本を襲った大地震と津波、その後の福島原発事故による電力不足と放射能汚染は日本経済に計り知れない損害をもたらしました。

 この大震災からの復興財源の確保に加え、台風12号による被害、タイの大洪水による打撃、ヨーロッパの財政・金融危機に端を発する急激な円高等、日本経済に大きな影響を与える事象が度重なる状況が続きました。

 東日本大震災においては、ビール酒造組合加盟各社は義捐金の拠出、ミネラルウォ-ター・補助食品等支援物資の提供、被災地への社員ボランティアの派遣等を通じて、震災直後より迅速な支援活動に全力を挙げました。一方で加盟各社も被災し、生産・物流・販売に支障をきたしました。各社とも商品の休売、新商品の発売延期、主力商品への生産集中、広告や販促活動の中止や延期等の対応を余儀なくされました。さらには放射能汚染を警戒する観光需要の減少や、自粛ムードによる業務用市場の冷え込み等の影響を受けました。

 各社の懸命の復旧作業により11月には全ての被災工場で出荷を再開しましたが、加盟各社の特別損失額は合計で約460億円(平成23年第3四半期決算ベース)に上りました。

 こうした状況の中で、加盟各社はビールの更なる魅力を訴えるとともに、多様化するニーズを捉えた新製品開発や、新たな価値提案に懸命の努力を傾注しました。しかしながら、消費者の節約・低価格志向、輸入新ジャンル商品の拡大等取り巻く環境は厳しく、ビールの年間総出荷量は、前年比95.9%と残念ながら前年を下回る結果となりました。また、ビール・発泡酒・新ジャンル商品合計では、前年比96.3%となりました。

税制改正要望

 ビール酒造組合は「発泡酒の税制を考える会」と共に、「ビール酒税の大幅な減税」「発泡酒酒税の減税」「新ジャンル商品の酒税の据え置き」を要望し、精力的に活動を行ってまいりました。

 政府が昨年12月に公表した「平成24年度税制改正大綱」では、酒税に関しては「酒類の致酔性や課税の公平性等の観点を踏まえ、類似の酒類についてアルコール度数に着目した税制とする方向で引き続き検討を進めます」と記載されています。

 ビール、発泡酒、新ジャンル商品に課される酒税は、国内の他の酒類に比べても、また諸外国の酒税に比べても著しく高率・高額な状況が続いています。本年は、社会保障と税の一体改革についての議論も行われますが、消費者の皆様のご期待に応えるためにも、消費税との二重課税による税負担の軽減とともに引き続きビール、発泡酒、新ジャンル商品に課される酒税の減税要望を行っていきます。

公正取引・市場問題

 ビール酒造組合加盟各社は、平成18年に国税庁から発出された「酒類に関する公正な取引のための新指針」に則り、自社ガイドラインを策定するとともに社内の遵守体制を整備しました。また、平成21年12月に公正取引委員会から発出された「不当廉売に関する独占禁止法の考え方」に示された酒類の取引に関する考え方にも十分配慮し、公正取引の推進に真摯に取り組んでおります。

 優越的地位の濫用問題については、不当な労務提供等が業界の公正取引を妨げることがないよう、真摯に取組んでいます。平成23年に行った支部調査員会との合同会議でのヒアリングでは、報道でも大きくとりあげられた、優越的地位の濫用により課徴金納付命令を受けた流通業者の事例などが指摘されたものの、全体的には労務提供問題は改善の方向にあります。

 ビール酒造組合は、流通を含めた酒類業界全体の健全な発展のために、加盟各社とともに引き続き公正な取引環境の構築に注力してまいります。

適正飲酒への取り組み

 WHOは2010年5月に採択した「アルコールの有害な使用を低減するための世界戦略」の推進に取組んでいます。

 2011年12月には、世界戦略への酒類業界の貢献をヒアリングし、今後業界が果たすべき役割を議論する場として、ジュネーブで「WHO consultation with representatives of economic operators」が開催されました。ビール酒造組合からは専務理事他2名が出席し、「Stop!未成年者飲酒プロジェクト」と「未成年者飲酒防止ポスター・スローガン・学校賞募集キャンペーン」を紹介し、世界戦略への業界としての貢献を強くアピールしました。

 また、世界の大手アルコールメーカーで構成し、ビール酒造組合が加盟しているGAPG(Global Alcohol Producers Group)は、「業界の自主基準づくりのサポート」「飲酒運転の防止活動サポート」「違法酒の実態調査」等をテーマとしたCSR活動を世界18カ国において展開し、それぞれの国で活動が成果に結びついてきています。

 一方でWHOは、本年1月16日~23日に開催された執行理事会に向けたdiscussion paperの中で、NCD(非感染性疾病)の危険因子のひとつとしてのアルコールの有害使用の削減指標を提案しています。

 問題はアルコールそのものではなくアルコールの有害な使用である、ということは2010年WHO総会決議における、全ての利害関係者による合意事項です。この合意の趣旨に反するような内容の指標設定には、ビール酒造組合は酒類業中央連絡協議会と連携し断固反対し、関係官庁やWHO事務局に対し、積極的に働きかけていきます。

 国内では、平成17年にスタートした「STOP!未成年者飲酒プロジェクト」を、昨年は4月と12月に全国9エリアで実施しました。従来このプロジェクトは、秋期は10月に実施しておりましたが、年末年始の方が未成年者飲酒の危険性がより高まるという調査結果に基づき、平成23年は12月を中心に実施しました。

 また、未成年者が接触する媒体としてはパソコンが重要という観点から、インターネット上にクイズ形式のバナーを貼り、さらに屋外の大型ビジョンや電車の車内ビジョン向けに動画を制作し、よりビジュアルな展開を図りました。

 このプロジェクトには、コンビニエンスストア、スーパーマーケット、カラオケスタジオ業界に従来から参加協力いただいていることもあり、キャンペーン認知率も84.9%と過去最高の数字となりました。

 もう一方の啓発活動である「未成年者飲酒防止ポスター・スローガン・学校賞募集キャンペーン」は、昨年第10回目の節目を迎え、多数の応募をいただきました。各部門の賞の他に、大震災で壊滅的な被害を受けながら、未成年者飲酒防止の活動に取組んでいただいた岩手県の中学校に特別賞を贈呈しました。平成24年1月に、審査委員長の東ちづるさんに学校賞を受賞した青森県の名川中学校と、沖縄県の糸満高等学校を訪問していただき、講演会を開催するとともに、両県知事を表敬訪問し学校賞の受賞と、未成年者飲酒防止への取り組みを報告しました。

 飲酒に関する連絡協議会の「酒類の広告・宣伝および酒類容器の表示等の自主基準」に関しては、平成23年9月、酒類とノンアルコール製品との識別をより確実なものとするため「アルコール分10度未満の酒類の缶容器すべてに『お酒』マークを表示する」等の改訂が実施されました。これにより、ビール、発泡酒、新ジャンルの製品全ての缶容器に順次「お酒」マークを表示することとなりました。

 ビール酒造組合は、酒類メーカーの団体としての社会的責任を果たすという意味からも、本年もこうした適正飲酒への取り組みに工夫と改善を加えつつ、全力を傾注してまいります。

注) 飲酒に関する連絡協議会:日本蒸留酒酒造組合、日本酒造組合中央会、日本洋酒酒造組合、全国卸売酒販組合中央会、全国小売酒販組合中央会、日本ワイナリー協会、日本洋酒輸入協会、ビール酒造組合

環境問題

ビール酒造組合は、日本経団連の「環境自主行動計画」に設立当初より参加することで、地球温暖化対策への取り組みを進めてきました。既に平成21年より、加盟社平均で平成2年比50%を超えるCO2削減を達成しています。

 多品種少量生産が進む中で、一層のCO2削減を推進していくことはメーカーにとって厳しいものがありますが、平成25年より始まる日本経団連の「低炭素社会実現計画」に参加し、引き続き低炭素社会の実現に向け更なる削減活動を実施し、産業界全体のCO2削減に貢献します。

 日本経団連の「環境自主行動計画」のもうひとつの柱である、「循環型社会の実現に向けた取り組み」では、加盟社の全ビール工場で発生する副産物や廃棄物について、再資源化率100%を平成21年より達成しています。今後も再資源化率100%の維持と再資源化の質向上に努めます。

 容器包装の環境課題に関しては、3R推進連絡会による「容器包装に関する3R推進自主行動計画」に参画し活動を継続しています。 ビール酒造組合といたしましても、その責務を果たすべく、リターナブルビールびん回収促進の啓発活動等を推進します。平成25年には、容器包装リサイクル法改正が予定されており、ビール業界は、自らの役割を果たしながら循環型社会の実現に向け積極的に貢献します。

ビール型プラスチックパレット(Pパレ)共同使用

 ビール酒造組合が事務局を運営している「Pパレ共同使用会」は、加盟社数が平成23年末時点で57社となりました。ビール型プラスチックパレットの共同使用を進めることにより、物流効率の向上を図っております。一方、会に加盟せずにPパレを使用している企業・組織に対し、無断使用防止・Pパレ返還の呼びかけを行うとともに物流専門紙に定期的に啓発広告を掲載しています。また、酒類・飲料の正規流通以外に流失したパレットの回収を強化しており、平成20年12月の取組み開始から、平成23年末までに7万枚以上のパレットを回収しました。こうした活動がより一層の効果を挙げるため、本年はパレット流通経路を確実に把握するためのシステム化や「Pパレ共同使用会」の組織改定に向けた検討を進めてまいります。

(注)Pパレ共同使用会加盟企業一覧   平成23年12月31日現在 会員57社

サントリー酒類株式会社 サントリーフーズ株式会社 サントリーワインインターナショナル株式会社
サントリービア&スピリッツ株式会社 アサヒビール株式会社 アサヒ飲料株式会社
キリンビール株式会社 キリンビバレッジ株式会社 サッポロビール株式会社 サッポロ飲料株式会社
三和酒類株式会社
月桂冠株式会社
日本盛株式会社
長龍酒造株式会社
大口酒造協業組合
札幌酒精工業株式会社
八鹿酒造株式会社
合同酒精株式会社
眞路ジャパン株式会社
山元酒造株式会社
高千穂酒造株式会社
白金酒造株式会社
土佐鶴酒造株式会社
小西酒造株式会社
白鶴酒造株式会社
髙橋酒造株式会社
株式会社一本義久保本店
長島研醸有限会社
北の誉酒造株式会社
ホッピービバレッジ株式会社
田苑酒造株式会社
清洲桜醸造株式会
ヤヱガキ酒造株式会社
指宿酒造株式会社
大関株式会社(多聞印含む)
沢の鶴株式会社
銀盤酒造株式会社
宝酒造株式会社
黄桜株式会社
萱島酒造有限会社
小正醸造株式会社
火の国酒造株式会社
富永貿易株式会社
神楽酒造株式会社
若潮酒造株式会社
賀茂鶴酒造株式会社
菊正宗酒造株式会社
辰馬本家酒造株式会社
霧島酒造株式会社
盛田株式会社
メルシャン株式会社
齊藤酒造株式会社
雲海酒造株式会社
秋田酒類製造株式会社
福徳長酒類株式会社
中埜酒造株式会社
秋田県発酵工業株式会社 
醸造技術の向上と国際化

 ビール酒造組合では、「国際技術委員会(BCOJ)」を組織し、ヨーロッパの醸造学会(EBC)やアメリカの醸造学会(ASBC)を中心とした、諸外国の技術者との国際交流を促進してきました。また、ビール大麦育種検討会、各社製品の相互試飲会、各種講演会等の場を通じ、ビール醸造技術の向上と品質保証に関る分析技術の整備、先端情報の共有や技術者同士の交流を深める活動に注力しております。昨年もビール酒造組合加盟各社は、世界のビール関連学会において、合計21件の最先端の研究成果を発表し、日本の高度な醸造技術をアピールしました。

 BCOJ年次大会は、本年第22回を迎え、11月8日(木)~9日(金)の2日間、千代田区の星陵会館で開催し、のべ約400名の参加者を見込んでおります。平成3年の第1回大会から昨年の大会までに、口頭発表で279件、ポスター発表で215件、合計494件の海外での研究成果発表の再演が行われており、世界のビール醸造技術の向上に多大な貢献を果たしてまいりました。

 今後もこうした活動を通じて、日本のビール醸造技術の更なる発展・向上、そして国際レベルでの中心的な地位確立を目指してまいります。

注) BCOJ :Brewery Convention of Japan
   EBC  :European Brewery Convention
   ASBC :American Society of Brewing Chemists

安全・安心と原料品質向上への取り組み

 ビール酒造組合では、原料である大麦、ホップから最終製品に至るまで、法令の遵守はもとより、さらなる品質の向上と安全性の確保を最重要課題として捉え、引き続き活動を推進いたします。 国産ビール大麦につきましては、ビール品質にとって重要なタンパク質含量の適正化、優良品種育種活動等、加盟各社や大麦生産者、各研究機関と協力し、中期的な視野に立った活動を推進してまいります。国産ホップにつきましては、農薬の「ポジティブリスト制度」を確実に順守できるよう、そのリスク回避策も含め農薬メーカーやホップ生産者、関係省庁と連携し活動してまいります。

 福島第一原発事故に伴う農作物の放射能汚染に関しては、ビールの原料である大麦、ホップ等の安全性確保のため、農林水産省、全国農業協同組合連合会、全国主食集荷協同組合連合会、全国ホップ農業協同組合連合会等の関係諸機関と連携を密にし、お客様に安心いただける確実な品質保証に今後とも全力で取り組んでまいります。

 ビール酒造組合は、これからもお客様に世界一の「安全と安心」をお届けできるよう加盟各社とともに、全力で取り組んでまいります。

 ビール酒造組合は、ビール本来の美味しさ、楽しさをたくさんのお客様にお伝えすることにより、一人でも多くの方々にビールをご愛飲いただけるよう努めるとともに、業界の健全な発展に向けた活動を継続してまいります。

 皆様方には引き続きご理解とご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

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