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リリース/会見

専務記者会見

岸野専務理事業界専門紙記者会見(2023年1月26日)

 昨年は新型コロナウイルス感染症に加えてウクライナなど各地域での紛争や緊張関係など、世界的に経済活動に対する不安要素が発生し、日本の経済も大きな影響を受けました。
 2023年は日本における新型コロナウイルス感染症の第5類への移行の検討など明るい材料もありますがまだまだ不透明な状況は継続すると考えられます。円安や物価高に対する生活防衛意識の高まりも想定され景気の減退が大変危惧されますし、更なるコストアップなど酒類業界にも影響を及ぼす可能性があります。
 また2023年10月には第2回目の酒税改正が実施される予定であり、発泡酒と新ジャンルの税率が一本化されますが、最終的にビール類の税率が統一される2026年に向けて、市場変化や消費動向を的確に把握する必要がありますし、一方で今後の財源問題にも注視しておかなければなりません。
 各国ではアルコールの有害な使用の低減に向けた施策の検討が進んでおり、その情報を正確に把握し国内におけるアルコール関連問題の取組みに適切に活かしていきたいと考えております。
 さて、2023年にビール酒造組合は設立70年を迎えます。ビール業界として公正な競争関係のもとで健全に発展し、そのうえで持続的な社会の実現に貢献するべく、物流や環境に関する中期課題も含めた業界が直面している様々な課題を再点検し、組合として具体的に取組むべき活動を明確にして、積極的に取組んでまいります。

(1)アルコール関連問題への取組み

 WHOが掲げる「アルコールの有害な使用を低減するための世界戦略」について、国際機関や主要国政府から継続的に情報を得ることにより、今後展開されるアルコール関連政策へ積極的に関与してまいります。
 また、国内における「第2期 アルコール健康障害対策推進基本計画」に基づき、20歳未満飲酒防止や女性の適正飲酒等のアルコールの有害な使用を低減させるための各種啓発活動に取組んでまいります。世界的にアルコールに対する規制の検討が進んでいます。また、国内では厚生労働省の飲酒ガイドライの作成が進んでいます。ビール業界としてマーケティング活動を継続していくとともにアルコール関連問題に自主的に対応していくことが重要であると考えます。2023年は飲酒ガイドラインを踏まえた啓発活動の方向性、また純アルコール量の容器への表記やデジタル広告への配慮等の議論を深め、取組みを強化してまいります。

(2)公正取引推進への取組み

 ビール酒造組合は「ビール製造業における景品類の提供の制限に関する公正競争規約」、「ビールの表示に関する公正競争規約」の遵守を加盟各社と一緒に進めてまいります。
 また、2022年6月1日に「酒類の公正な取引に関する基準」が改正・施行されたことを踏まえ2023年は、ビール酒造組合が主催する委員会や全国各エリアの支部調査員との合同会議を通じ、業界における公正な取引を継続して推進してまいります。

(3)酒税に関する要望活動

 平成29年度税制改正により、2023年10月に第二回目の酒税改正が実施されます。ビール酒造組合は2026年以降のビール・発泡酒の税制の見直しを実現するための活動を組み立て、財務省・国税庁・与野党・国会議員への酒税に関する要望を行います。また価格改定によるビール業界の市場変化や消費者動向を的確に把握し、ビール業界の取組みや市場状況、課題等を発信し、理解を求める活動を継続して進めてまいります。
 「酒税事務等の合理化・簡素化要望」については、加盟各社から新規要望を募るとともに、継続中の要望事項に関しては、必要なデータ収集や事例調査を行ったうえで優先度を明確にし、酒中連へ提出いたします。また、国税庁とは適宜、要望事項検討の進捗状況を確認し、より効率的に要望の実現を目指します。
 2023年10月の酒税改正に向けては、必要な酒税関連事務の変更が速やか、かつ円滑に行われるよう、加盟各社と各制度の共有、周知を早期に進めてまいります。

(4)物流効率化への取組み

 ビールを安定的かつ効率的に得意先に納品する持続的な物流環境を構築するため、関係省庁や関係団体の理解・協力を得て、効率化を推進するための新たな仕組みの構築や運用面の改善等、業界で解決すべき物流課題に取組みます。
 物流インフラのツールとしてその重要性がさらに高まっているPパレに関して、一般社団法人Pパレ共同使用会と連携し、Pパレの不正使用防止啓発活動や法的手段による対応を行うとともに、Pパレの円滑な需給体制の構築に向けた取組みを継続してまいります。

(5)環境への取組み

 引き続き、経団連のカーボンニュートラル行動計画と循環型社会形成自主行動計画に参画し、CO2排出量削減・廃棄物対策に取組んでまいります。
 CO2排出量削減については、カーボンニュートラル行動計画フェーズⅡ目標達成を目指し、加盟各社ビール工場での高効率設備導入や省エネルギー活動等を推進するとともに、新規技術の導入や再生可能エネルギーの活用も進めてまいります。Scope3の取組みとしては、ビール業界にとって影響が大きいカテゴリーである「容器包装関連(アルミ缶や段ボール)」や「原料関係」の業界に優先してアプローチし、互いに協働できる活動を模索していく予定です。  また、廃棄物対策につきましては、ビール工場での副産物や廃棄物の排出抑制と分別回収の徹底により、廃棄物再資源化率100 %、使用済みプラスチックの有効利用率100 %を維持・継続できるよう取組んでまいります。
 これからもビール酒造組合は加盟各社と共に、SDGs、環境関連の取組みを通じて社会に貢献してまいります。

(6)原材料に関する取組み

 ビール酒造組合と加盟各社は、原料から最終製品に至るまでさらなる品質の向上と安全性の確保に取組みます。国産大麦に関しては、気候変動や病害虫への対応を含め、醸造特性・農業生産性に優れたより良い大麦品種の選抜、普及を関係各所と共に進めていきます。国産ホップに関しては、既存農薬とは作用機構の異なる2種類の農薬を選定しましたので、新規登録に向けて試験を継続し、さらなる安定供給を目指していきます。
 輸入麦芽では、海外製麦会社が生産性向上のためジベレリン酸を使用した麦芽の製造を今後は増やすと推測されますが、現状でジベレリン酸を使用した麦芽の輸入は認められていません。調達リスクの低減など安定供給、品質向上、コスト削減を目的に輸入が認められるよう関連省庁と検討していきます。
 原料の新たな委託研究では、輸入麦芽の価格高騰や物流混乱から国産大麦の注目度が高まっている為、国産大麦生産コスト構造の解明に取組みます。調査結果は、今後の国産ビール大麦の調達・契約方法や育種目標の方針を検討するための基礎データとし、国産ビール大麦の安定供給に貢献していきます。

(7)技術力向上への取組み

 国際技術委員会(BCOJ)活動、ビール醸造技術連絡会、安全や分析に関する勉強会等を通して、国内外のビール技術者に加えて、異業種の技術者との交流を促進することで、日本のビール製造技術・分析技術のさらなる向上や若手技術者の育成を図り、世界における日本ビールの存在感を高めてまいります。
 2023年6月には、ASBC Meetingがアメリカ ピッツバーグで開催されます。BCOJからも議長や委員が参加する予定であり、世界のビール業界を牽引するべく、活発に活動してまいります。BCOJ分析法については、新たな分析手法の追加を含めた改訂を行い、ビール技術者へ最新の情報を提供していきます。
 新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大の影響により生活習慣が大きく変わる中、今後もビール技術者がビールの魅力を高め、お客様に新たな商品や価値の提案をしていけるよう、技術や情報を発信し、共有できる場を提供してまいります。

以上

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